8/26

私には両親がいて、それらは船へ乗ったのだった。 海を行く大型船は、段々と輪郭だけが浮き出てきて設計図のような線の集まりになっていった。軽くなりすぎたようだ、船は海を置いていかねばならなくなった。違う。小さい頃はあれほど生き生きとしていた海は…

8/4

夏の夜、胃痛のような蒸し暑い雨が降る。 電車はもう来ない。線路に傘を差した霊。私はやはり嗤われている。なのに。 殺してください。なんの希望もなく。

7/29

交叉点にイチジクが咲いている。アスファルトがカリカリのチーズのように苦味を増してきているのだ。自動車は今頃氷の浮かんだ海に、一緒に浮かんでいるのだと思う。イチジクの葉が粘り気を持って歩いてくる。子供用のプールに水を張る。交叉点は浅瀬に落ち…

7/22

窓から首を出して外を見ると、ぼくの大切なメモが黄土色の培養液に浸っていた。わたしは手を伸ばさない、赤ちゃんが泣いている。ストローをくわえて息を吐くと、わたしのほっぺがブクブク音を立てた。 こうしているのも数秒。スプーンでかき混ぜたら、溶けて…

7/18

正気とは思えない。銅製の教会を言葉の角で見掛けたなんて。ぞっとするいたずらだと思う。対してわたしも公開されるはずの飲み口を、緯と経にリストカットしようと一概には考えない。お互い様かもしれない。 模造紙はよく午前3時をからかって雑に「げんちゃ…

7/18

大きな時間が遠ざかったようだ。わたしは頭上に交通渋滞を寝かせていた。一番始めに止まったあなたを綺麗に切り取っていた。想定していたより少しだけ装い、短く整えて、行き詰まってしまった姿をゴミに出した。あなたはどう思うだろうか? 返信が来ない。わ…

7/15

病院の中央玄関は待合所になっていた。生後三ヶ月ほどの小さな機関と、6才くらいの構成要素スカートが遊んでいた。そこへ津波が来た。わたしは小さな機関をリュックへ入れて、構成要素スカートを抱えて走った。病院は誰を避難させるかでパニックだった。上へ…

7/10

階段が途中でなくなっていた。階下にまで光は射し込まない。ぼくたちはその一段一段に座り込んで昼夜を共にしていた。 豆のスープが朝と晩に配給される。お湯のなかに豆が数粒入ったものだが、温かさは生きる喜びだった。ここでは多くのことができないけれど…

7/2

あなたの瞳から鳩がこぼれ落ちる。ぽたぽたこぼれ落ちる。テーブルに舞い降りた鳩は遊んでいる。鳩でいっぱいのテーブル。あなたの頭が降ってきて、ごちん、とぶつかる。鳩は一斉に飛び立つ。 わたしは再生ボタンを押す。

7/1

ずっとぼーっとしてたんだけど。 なんか珍しい種類Kの昆虫Fが表れて、その背中が種類K*の昆虫F*に表れたりして、要するに綺麗だなって思ったわけ。でふと思ったんだけど、こんな風に「思う」とか言えたり、こんな風に文字を「書ける」のって久し振りだなーっ…

6/27

天涯孤独の子犬コーギーはハンパなくかわいい。もうヤバい。たこ焼きの中から顔を出すのだと思う。同時に奴はめざとい。昨今のやかん泥棒は奴。三次元空間のゴッドファーザーは奴。あなたのペットは奴。時をかけるコーギー。短い奴。 お線路さま。電車が通る…

6/23

クローゼットの窓から、ただ火が灯っているのが見える。涼しい夜ですから、ほどほどに本を、と影は揺れる。 氷水を飲む音がする。

6/20

水溜まりに鯉が。主張。「期間限定鯉であり、いつかの龍」 error... ある王家の墓の透過光がスクリーンの底に溜まり、水面に鯉の模様が描かれておりました。わたしは言いました。「源泉を枕に眠り猫」鯉の模様は読みました。「沈黙し嫁風鈴の人形劇」水面は…

6/18

お天気なのです。非〝参ります〟の方を参りましたら、空気がぶかぶかで、ぶかぶかですから、ぼやけてねじれて。大丈夫かなと心配だったんですけど。広場を通りすぎて、狭い道の階段を歩いて行きまして、いやここら辺は狭い路地ばかり雑多なのでして、で高い…

6/13

肌寒くて、そろそろ秋かなー、すると紫の上が庭見たいのってさ。布団から起きて庭見てて。しとしと雨降ってて。紫の上がもうせんといてええよ、終わりやからって、でもお願いしたら水星みたいないいよって言ってくれたとかだったと思うよ。で光源氏とか明石…

6/12

たくさんの爆発をありがとう。ぼくは天国にいるよ。クローゼット空間が傾いていく。クローゼットの中にコーギー。コーギーも傾いていく。十分にふわふわ、コーギー。 クローゼットに服を仕舞う女性の絵は印象派だった。様々な服がその絵に溶け込んでいる。水…

6/11

指でスマホの画面を触ってこの文章を打つための錠剤ください。なんか緑色の、明らかに過去不足の精神欠乏の時間成金の泣き虫の泣かず虫の欲求対自のアシナガバチ殺しです。 だれか。 無人じゃない世界で対無人言語が日記を書く。たまたま持ってた言語を、動…

6/10

からからからから。 風鈴の音の浮遊物体。がらすの歩行者。 太陽のかみさま。仕える女たち。空間を日と影で分離させ。わわわわわ。 道で女児に話しかけられる。 「おにいさん。わーおにいさんおにいさん」 午前中で帰宅の、ランドセルの女児。 「あなた、い…

6/7

オルゴール記録器は一日中周囲の音を吸い続け、波動を結晶化してシリンダーを形成します。あとはぜんまいを回せば記録を再生できますが、ぼくの持っているのは無音型オルゴール記録器でした。再生される記録は終始無音でよく分かりません。シリンダーを紙媒…

6/6

アザラシのぬいぐるみはぷにぷに押しても沈黙しています。ただかわいいだけです。ぼくは肩を落としながら、奴に監視員失格という名前を授けました。監視員失格は言いました、「窓の外の往来より一人止まってこちらに近づき、それに賄賂を渡され『沈黙せよ』…

6/5

クローゼットを整理していると、電子的な炎が見つかりました。電子的な炎は酸素を必要とせず、短い蝋燭に点けた炎をシャボン玉の中に保存して愛でる文化もありましたね。古い話ですが。壊れてないか確かめるため実際に息を吹き掛けると普通に点きました。加…