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アザラシのぬいぐるみはぷにぷに押しても沈黙しています。ただかわいいだけです。ぼくは肩を落としながら、奴に監視員失格という名前を授けました。監視員失格は言いました、「窓の外の往来より一人止まってこちらに近づき、それに賄賂を渡され『沈黙せよ』と。名前を授け賄賂橋渡しとする。わたしは返答し『言語活動においてのみか』と。賄賂橋渡し遠方に行きて曰く『いかにも』と。靴音遠ざかりし。」と。

監視員失格に賄賂として渡されたのは、ただの温かいミトリキキトリでした。ミトリキキトリはある大学生が初めての一人暮らしで炊事に困り方々に教えを乞うておもむろに作ったバジルスパゲッティです。では賄賂橋渡しは大学生の類い?  しかしそれでは不思議です。炊事に困った大学生は、やっとのことで作ったミトリキキトリを他人に振る舞ったりなどしません。腹が減っているからです。ともすれば胃の中で調理をし、作りながら食べ、胃液で食器を洗うほどのズサンな人。見知らぬアザラシのぬいぐるみになど渡さないのが道理と思われます。

アザラシのぬいぐるみはお腹が減っていないので要らないと言います。ぼくはミトリキキトリを食べながら監視員失格の監視員的成長に期待しながらも、明日の監視を外しました。代わりにオルゴール記録器で周囲の音を記録させます。