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オルゴール記録器は一日中周囲の音を吸い続け、波動を結晶化してシリンダーを形成します。あとはぜんまいを回せば記録を再生できますが、ぼくの持っているのは無音型オルゴール記録器でした。再生される記録は終始無音でよく分かりません。シリンダーを紙媒体に印刷してみましたが、内容は音声を言語化したものでぼくにはさっぱり。オルゴール記録器の装飾として刻まれている蓮の花は言います。「あなたは音声言語はできないのですか。もしご興味があれば私に。ちょうど音声言語の教材を作っているところですので」ぼくは興味があったので進捗を尋ねました。「使用頻度の高い音声1900音をミツァールで調律しています。ミツァールは無音を奏でる西方の弦楽器です。音声言語は意味が存在しません。だから発音が命となっています。私はそう考えます」そして蓮の花は静かに花を閉じました。

窓からはやはり温かい光が差し込んできます。クローゼットにベッドを持ち込み、そこで昼寝をしたり字を読んだり踊りの練習をしたりしています。窓の外の様子は相変わらず推測の域に引き籠り勝ちですが、ぼくも窓の外にあんまり期待していないので。